活動実績 (確認用)

【シビアアクシデント解析コードの整備・教材化と研修】講師招へいによる既存解析コードや簡易計算に関する研修会開催(平成29年度)

 MAAPコード以外の既存解析コードや簡易計算について、深層防護教育に求められる計算性能の有無、解析モデルおよび適用限界を把握するため、シビアアクシデント解析コードに関する研修会を開催した。

 

No.1

シビアアクシデント総合解析コードSAMPSON

講師:内藤 正則 氏、木野 千晶 氏(エネルギー総合工学研究所)

日時:平成29年9月25日(月) 9:00~17:00、26日(火) 9:00~15:00

東京電力福島第一原子力発電所事故で溶融デブリの状態把握を目的とした解析評価に活用されている機構論的シビアアクシデント総合解析コードの概要を紹介した。また、その解析コードを用いた実習を行った。

No.2

シビアアクシデント総合解析コードTHALES2

講師:丸山 結 氏(日本原子力研究開発機構)

日時:平成29年10月30日(月) 9:00~15:00

日本原子力研究開発機構で開発され、確率論的安全評価PRA手法としてソースターム(環境への放射性物質の放出量やタイミング)の評価に活用されてきたシビアアクシデント総合解析コードの概要を紹介した。

No.3

シビアアクシデント総合解析コードMELCOR

講師:氷見 正司 氏(アドバンスソフト株式会社)

日時:平成29年11月6日(月) 9:00~15:00

米国NRC(原子力規制委員会)で開発され、炉心溶融進展やソースタームに係わる主要な現象を網羅したシビアアクシデント総合解析コードの概要を紹介した。

 

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 本事業で導入するMAAPコードは、深層防護第4層および第5層を対象としており、特に第3層までの前段否定により、第4層で防護しなければならない場合の脅威の抽出と考案した対応手段の効果を確認すること、第5層では環境に放出される放射性物質等の情報を抽出し、EAL、OILを含む第5層としての緩和策を検討するための情報を提供することを目的としている。

 このため本教育カリキュラムでは、深層防護の基本的考え方、深層防護の歴史、他産業の深層防護、原子力の深層防護の考え方と実装について講義を行い、授業時間内(1コマ)に実習として前段否定の解析と考案した対応手段の効果の確認や環境への放出に関する情報の抽出を行い、さらに検討を深めるための時間を確保できることが必要である。

よって、解析コードに求められる要件は以下の通りであり、MAAPコードは何れも満足している解析コードである。

  • プラントのシビアアクシデント総合応答が解析できること。
  • シビアアクシデント現象についてのモデルが含まれていること。
  • 環境への放射性物質放出量等の情報が得られること。
  • 授業時間内に解析が終了できるだけの高速演算性能を有すること。

 

 今回開催したMAAPコード以外の既存解析コードの研修会と、米国NRCとEPRIで実施されているMAAP-MELCOR Closswalkレポート[1]ならびにOECD/NEAで実施されているBASFプロジェクトレポート[2]の分析により、MAAP、MELCOR、SAMPSON、THALES2の性能を確認した。

 MAAPコード、MELCORコード、SAMPSONコード、THALES2コードは深層防護の第4層、5層のシビアアクシデント総合応答解析が可能であり、同様シビアアクシデント事象が何等かの形でモデル化され、環境への放射性物質放出量等の情報を得ることが可能であることが分かった。適用限界は軽水炉の原子炉容器及び格納容器内と対象はすべて同じで、解析モデルや解析評価などそれぞれ特徴があり、同じシビアアクシデント事象の解析を行った場合でも計算結果に違いは出てくるが、一連のシビアアクシデントの事象進展を解析することができる。しかしながら、学生が直接解析コードを用いて、シビアアクシデント事象進展の解析を行う実習においては、開発元との使用制約や使用上の問題点などいくつか熟慮する必要があることが分かった。

 結論として、深層防護の教育カリキュラムの実習でMELCORコード、SAMPSONコード、THALES2コードを使用することが難しいため、それらの解析コードを教育カリキュラムの座学の中で活用する方向で検討していく。また、MAAPコードは深層防護の教育カリキュラムに最も適したシビアアクシデント解析コードであると考えるが、そのユーザーライセンスを取得できる見込みがなくなったため、深層防護の教育カリキュラムでは取り扱わないこととした。

 

[参考文献]

[1] Modular Accident Analysis Program (MAAP) –MELCOR Crosswalk Phase 1 Study, EPRI3002004449, 2014/11

[2] Benchmark Study of the Accident at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant (BSAF Project), Phase I Summary Report March 2015,

  NEA/CSNI/R(2015)18 February 2016

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