シビアアクシデント解析コード

シビアアクシデント解析コードの整備・教材化と研修

1. シビアアクシデント解析コードの整備・教材化

 

 原子力安全システム研究所との福島第一原子力発電所事故関連研究に特化した共同研究のもと、シビアアクシデント解析における米国のスタンダードである事故解析コード(Modular Accident Analysis Program (MAAP):米国電力研究所)を用い、大学院生を中心に短期の研修プログラムを平成27年度末に試行実施しました。福島第一原子力発電所事故の解析にも用いられている解析コードであり、プラント条件、事象イベント、計測できたプラントデータなどを入力し、軽水炉の炉心損傷、原子炉圧力容器破損、原子炉格納容器破損からコア・コンクリート反応、放射性物質の発生・移行・放出に至る事故シーケンス全般の現象解析に用いることができます。
 現状では、福井大学におけるMAAPコードの使用は、福島第一原子力発電所事故関連の共同研究に限定されており、ライセンス上、広く規制人材の育成分野での活用(福島第一原子力発電所事故関連以外や他機関での教育分野での活用)ができず、ならびに、大学院生レベルでも少々理解が困難であるが、試行の結果、規制人材育成分野で非常に有用なツールとなることが想定されるため、本事業により、この解析コードを用いた研修プログラムを推進し(初年度は、解析コードを活用した教育方法や、教育効果の検討。次年度以降、5名程度 1回/年)、受講者の意見を集約し、この解析コード活用の助けになる教材開発を行い、随時、研修プログラムに反映します。このため、専任の講師クラスの若手1名の人件費、米国での研修費用※、および開発委託費を計上します。

 

※(参考)MAAP ADVANCED PROFICIENCY TRAINING COURSE

 MAAPコードを開発したFAI社が主催するMAAPトレーニングコースで米国内のPRA解析の品質保証を目的として開設されました。修了試験に合格すると「Certification」が発行されます。米国ではASME PRA StandardとNRC Regulatory Guide 1.200でMAAP解析者の資質を証明することが求められています。ASME PRA Standard で求められる要素は、①能力ある訓練された者がコードを使用すること、②コードとその適用限界について理解することで、これらの能力を有することを開発元のFAIが認証するもの。当初は、専任講師が受講することを想定しています。その後は、以下のMAAP解析コードによる研修において優秀な成績を収めた学生に対し、さらなる技術力向上のため米国へ派遣します。

 

(参考:MAAP活用具体的内容)

 

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2.シビアアクシデント解析コードによる研修

 

1)解析体験コース(主として学部生対象:1日間)

テーマ:既存カリキュラム(座学)やeラーニングを通じて得た知識をもとに、実際にMAAPコードを操作して解析の流れを学びます。

カリキュラム概要:

・原子力発電所におけるシビアアクシデントの事故進展挙動
・シビアアクシデント解析コードの操作方法
・加圧水型軽水炉のシビアアクシデント解析体験
・沸騰水型軽水炉のシビアアクシデント解析体験

対象者:大学生・大学院生(5名×1日間×1回、3年目以降×2回、最終年は10名程度に増やす)
期間 :8月−10月 ※他のカリキュラム開催日との調整後に決定

※3年目以降は2回のうち1回を通常カリキュラムで実施、残る1回を募集

 

2)各種シビアアクシデント解析研修(大学院生・若手職員対象:3日間)

テーマ:MAAPコードの操作が分かっていることを前提に、実際の事故例に照らして解析を行います。また、新規制基準に基づく安全対策の有効性などについて解析を通じて理解します。

カリキュラム概要:

・福島第一原子力発電所事故の概要
・福島第一3号機の事故進展解析
・実用発電用原子炉に係る格納容器破損防止対策の有効性評価の概要
・新規制基準が対象とする重大事故のシビアアクシデント解析
 <雰囲気圧力・温度による静的負荷(格納容器過圧・過温破損)など>
・新規制基準に基づく重大事故時安全対策の有効性解析
 <雰囲気圧力・温度による静的負荷(格納容器過圧・過温破損)など>

対象者:大学生・大学院生・若手行政職員
期間 :3年目(8月−10月)(5名×3日間×1回)
    4年目以降(8月−10月)(10名×3日間×1回)

※期間は他のカリキュラム開催日との調整後に決定。
※4年目以降は一部の内容を通常カリキュラムでも実施。

 

3)EAL解析研修(大学院生・若手職員対象:2日間)

テーマ:MAAPコードの操作が分かっていることを前提に、シビアアクシデント解析によるEAL該当状態の抽出方法、事故事象とEALの対応を理解します。原子力災害対策指針に基づく防護対策が理解します。

カリキュラム概要:

・原子力災害対策指針に基づく防護対策の概要
・シビアアクシデント解析によるEAL該当状態の抽出方法
・任意の事故シナリオによるEAL発生時刻の解析

対象者:大学生・大学院生・若手行政職員
期間:4年目(8月−10月)(10名×2日間×1回)
   5年目(8月−10月)(10名×2日間×1回)

※期間は他のカリキュラム開催日との調整後に決定。
※4年目以降は一部の内容を通常カリキュラムでも実施。

 

4)放射性物質放出挙動研修(大学院生・若手職員対象:3日間)

テーマ:上記のいずれかの研修を受けていることを前提に、シビアアクシデントによって環境に放出される放射能量を計算する方法を学びます。

カリキュラム概要:

・原子炉の運転と燃料燃焼挙動/炉心燃焼計算/核データセットの概要
・ORIGEN2.2コードの操作方法と代表炉型の燃焼計算
・MAAPコードの放射性物質移行挙動モデル
・核種のグループ化と評価対象核種の概要
・ガンマ線エネルギー群への縮約と外部被ばく評価

対象者:大学生・大学院生・若手行政職員
期間 :5年目(8月−10月)(10名×3日間×1回)

 

(参考:シビアアクシデント教育で期待すること)

 

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