費用評価
費用評価
研究概要
原子力施設の廃止措置工事の実施に当たっては、予め機器等の解体撤去や解体準備等に必要となる費用を算出し、それに基づいて廃止措置計画を検討・策定することが重要となります。現在、日本における1100MW級大型発電炉の廃止措置費用は、BWRで565億円、PWRで544億円[1]と見積もられています。しかし、廃止措置計画には様々な不確実性・不確定性が存在するため、実際の作業は必ずしも計画通りに進むとは限りません。そのため、作業進捗の不確実性を考慮した予算の算出を行なう必要があります。日本における廃止措置費用の見積もりには、この不確実性はまだ反映されていません。
また、アメリカやイギリスの廃止措置費用の算出では,不確実性を見込んだ余裕分として、予備費を費用に上乗せしていましたが、予備費の設定には定量的な根拠がほとんど存在しませんでした。そこで、本研究では、原子炉解体実績データの分析に基づき,廃止措置費用の持つ不確かさについて定量的に考慮した上で費用を評価する手法について検討しています。
[1] 総合資源エネルギー調査会電気事業分科会原子力発電投資環境整備小委員会(第五回)資料
原子炉(JPDR)解体実績データの統計的分析
廃止措置の費用を算出するためには、廃止措置作業の人工数を評価することが不可欠となります。従来の人工数の計算方法では、作業量を支配する特定の指示量と人工数との関係を近似的に表す、単位作業係数が用いられていました。この単位作業係数は,過去の解体実績をもとに設定されます。実績データは様々な要因によりばらついていますが、単位作業係数は単にそれらの平均値であるため、ばらつきを表すことができません。そこで,実績データのばらつきを統計分布として抽出し,人工数を分布とともに計算する手法を検討しました。本研究では、JPDRの解体実績をもとに単位作業係数および人工数の分布を抽出しました。
モンテカルロ計算を用いた人工数分布の算出手法の検討
実績データの統計的分析に基づいて、不確実性を考慮し、モンテカルロ計算を用いた人工数の算出方法を検討しました。人工数の算出結果より、予備費に相当する量について考察を行ないました。
作業期間の分布の算出手法の検討
人工数の変動だけでなく、作業期間の変動も費用に影響を与えます。そこで、作業人工数の分布から、作業期間の分布を算出する方法についても検討しました。
今後の展望
現在は、これらの方法論の大型発電炉に対する適用手法について検討を行なっています。
参考資料
これまでの学会発表
[1] 奥出陽香、川崎大介、柳原敏:「廃止措置の費用評価(1)単位作業係数の不確実性が費用評価に及ぼす影響」 日本原子力学会2015年秋の大会 2015年9月
[2] 奥出陽香、川崎大介、柳原敏「廃止措置の費用評価(2)廃止措置工程の不確実性に係る検討」日本原子力学会2016年春の大会 2016年3月
[3] Haruka Okude Daisuke Kawasaki, Satoshi Yanagihara: Study On Decommissioning Cost Evaluation Methodology Based On The Records Obtained Through JPDR Project, International Conference on Advancing the Global Implementation of Decommissioning and Environmental Remediation, 2016.